福岡県内の小児歯科の虫歯治療の2日後,2歳の子が死亡したというニュースがありました。
福岡パシフィック法律事務所でもいくつか医療訴訟の経験があります。
医療事件は立証が難しい類型です。
「治療をした事実」と「死亡した事実」が疑いもなくはっきりと存在するのですが,その両方の事実をつなぐ「因果関係」の立証がとても難しいです。
もちろん,治療にミスがあったという「過失」の立証も難しいのですが,仮に治療に過失があったとしても,因果関係がなければ,文字通り,治療ミスと死亡は関係のないことである,という判断がなされてしまいます。
福岡パシフィック法律事務所で取り扱った事件でも,他の医療関係の専門家などに話を聞くなどしたりしますが,そうすると,
「わたしならこのような治療はしない」「このような方法は危険だ」
などの意見を聴くことができ,一般の医療関係者の水準からみて,過失があったように思える証言をもらうことはあります。
それらの証言を手掛かりに,さらに調査を進めることで,なんとか過失があったと言えそうだとしても,
因果関係まで明確に,
「この治療をすれば,必ずこのような結果になる」
と証言が得られることはほぼありません。
因果関係の立証は手掛かりもなく,非常に難しいのですが,現在の裁判では,原則として因果関係があるということは被害者側が立証して医療側は因果関係がないことを立証する必要がないことになっています。
これでは不平等なので,これまでの裁判例などで,裁判所も被害者側の立証責任を軽減するよう工夫をしているものも見られますが,
このあたりは,裁判所や法律家の感覚と一般市民の市民感覚のずれがあるところではないでしょうか。
日本では刑事事件では2009年から裁判員裁判が行われることとなりましたが,民事でも陪審員の制度が必要な類型もあるという声も挙がるかもしれません。
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