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スシロー ペロペロ動画少年へ6700万円の損害賠償請求

スシローが、醤油をペロペロなめるなどの動画を拡散させた少年に対して6700万円の損害賠償を求める訴訟を提訴しているとのニュースが報道されました。

気になるところは、やはり、6700万円というお値段でしょう。

並んだ寿司

※スシローの写真ではありません

ニュースで報道される限り、次のように言われています。

  1. 被告の少年がスシローの岐阜の店舗を友人と訪れる
  2. 被告少年は醤油のボトルを舐める、唾液をつけた指を回転している皿につけるなどの行為に及ぶ
  3. それを友人が動画にとる
  4. 報道をみる限り詳細は不明ですが動画が拡散される
  5. スシローの客足が減る
  6. ボトルなどの廃棄、衛生のために多額の費用がかかる
  7. 株価が168億円も下がる

このように見ると、スシローの損害は168億円以上と言えそうです。

裁判で認められる因果関係

ところで、少年が店舗に入ったこと自体が、168億円の損害だ、というと少し飛躍し過ぎな気もしますよね。

よくSFなどのタイムリープ作品では、168億円の損害を阻止するために、少年が店舗に入るのを止めるなんてシチュエーションがあったりします。そう考えると、店舗に入ったこと自体と168億円の損害が全く因果関係ないという訳ではないのですが、SFの世界の因果関係と、一般常識で考える因果関係と、あるいは道徳感情的な因果関係と、そういうものともちょっと違うのが裁判で認められる因果関係です。

今回、スシロー側は、2の行為と5や6の損害との間に因果関係が裁判で認められるべきである、と主張しているようです。

これに対して、被告の少年側は、2の行為や3の撮影は認めるが、4の拡散自体、少年の知らないところで偶然生じたことであるし、ましてや5の客足は、飲食店はどこも客足が減っていて、2の行為と関係ない、6のボトルの廃棄も少年が舐めたボトルを廃棄すること自体は関係あるかも知れないが、全部のボトルを廃棄したのは関係ないなどと反論しているようです。

このように裁判では、関係ある、関係ないという議論をするわけですが、実は、そもそも法律が因果関係という概念を設定した背景には、たんに因果関係そのものを判断するだけでなく、行為の悪質性、違法性を考慮するツールとして活用する緩衝材の役割を持たせています。

つまり、2の行為が極めて悪質ならば、損害との因果関係が認められやすく、それほど悪質でなければ因果関係がないということにして、結論の妥当性が保たれるように認定できるわけです。

スシロー側としても、2の行為が、168億円ほどの違法性を有するとは、さすがに言い過ぎだと思ったのかも知れません。

もっとも、裁判では、スシローが、6700万円だと言っているのに、裁判官が
「えっ?スシローさん、それだけでいいんですか?1億円でもいいですよ」
なんて言ってくれることは絶対にないので、認められる可能性のあるギリギリ最大の金額で請求して6700万円という数字になったのだろうと思います。

本件では、どのような判決が出るか非常に楽しみです。

一般論としては、せいぜい数百万円程度の悪質性なのかも知れませんが、これだけ大きな問題となってますし、今後、似たような悪ふざけが2度と起こらないように、悪質性、違法性を重くみて、1000万円くらいの判決は出て欲しいところです。