1、糸島市の請求
福岡県の糸島漁協が糸島市管理の漁港にあるプレジャーボートの係留場所を無許可で貸し出していた問題で、市は9月10日、漁協が船の所有者から徴収していた過去10年分の使用料約1000万~1500万円を不当利得として漁協に返還請求すると発表したそうです。

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福岡パシフィック法律事務所でも不当利得返還請求訴訟は何件も経験がありますが、一般には、「不当利得返還」という言葉自体はあまり馴染みがないようで、よく誤解をされることがあります。
このニュース対しても、
「漁協から1500万円を市が回収できても市は受け取る理由が有るのか?」
「お金はプレジャーボートのオーナーに返すべきだ」
「真面目に係留費を払ってる市民にとっては見過ごせない」
「使用料の返還請求って、今後も金払えば認めるということ?」
「1500万円では安過ぎる。1億請求しろ」
など、さまざまなご意見があるようです。

2、不当利得とは?
不当利得というのは、民法703条に規定がありますが、これは、契約関係などに基づいた権利がないのに利益が出てしまったときの条文です。
つまり、糸島漁協は、なんら権利がないのに、糸島市が所有する係留場所で勝手に儲けてしまった、というときの条文です。この「儲け」が糸島市の「損害」と因果関係がある場合は、糸島市は漁協から儲けを受け取ることができます。
さて、糸島漁協が勝手に儲けたことで、糸島市は「損害」があるのでしょうか。
マンションやアパートなどの家賃を考えてみましょう。
大家さんは入居者さんと契約をして家賃をもらいます。
でも、契約がない空き部屋に勝手に不審者のような人が住みついてしまったら?
そもそも空き部屋なので大家さんは損害がないようにも思えますが、ちゃんと契約をしていれば家賃をもらえたはずなので、このようなときには「賃料相当損害金」という表現をしますが、ほんとうだったら賃料相当額をもらえたはずなのにもらえていないから「損害」があると考えます。
本件でも、糸島市は「使用料相当額の損害が発生した」と言えるのだろうと思います。
ですので、
「漁協から1500万円を市が回収できても市は受け取る理由が有るのか?」
という質問には、受け取る理由があると言えそうですし、
「お金はプレジャーボートのオーナーに返すべき」
という考えにはなりません。
また、
「真面目に係留費を払ってる市民にとっては見過ごせない」
との意見ですが、糸島漁協に対して係留費を支払った人たちは、糸島漁協との間では契約に基づいて支払ったものだと思われますので、不当利得の話から導き出せる帰結ということにはならないでしょう。
つぎに、
「使用料の返還請求って、今後も金払えば認めるということ?」
との意見ですが、契約がない空き部屋に勝手に不審者のような人が住みついてしまったので、大家さんが「賃料相当損害金」を請求したとしても、契約の存在を認めて「賃料」を請求したのではありませんので、今後、契約が生じるということにはなりません。
3、懲罰的な意見
そして、このようなニュースが出たときには、
「1500万円では安過ぎる。1億請求しろ」
というような極端に重いペナルティを民事上の請求で認める見解がでるのですが、「損害」は1500万円なのに、1億円もらえたら得しすぎてしまいます。
たとえば、本を1冊売ったら1500円の売上になるとしましょう。
そして、1冊1500円の本を万引きされたら、万引きした人には1万円請求できるとする。
このようなことが公に認められると、まじめに本を売ったり、万引き対策をするのが馬鹿らしくなりかねません。
むしろ、万引きしてください、という感じに、すぐ手を伸ばせばいくらでも持ち逃げできるように誘惑的に店をつくっておいて、実際に誘惑に負けて万引きした人がいたら1万円請求したほうが、真面目に本を売るより売上があがります。

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5冊本を売って5人のお客様の対応をするより、1回万引きされたほうが得、という事態になってしまうのです。
むしろ5人のお客様にご来店していただくより、5人の万引き犯に来てほしいという状態です。
このようなお店が日本中で当たり前とならないよう法律は運用されているとお考え頂けたら幸いです。
なにをもって損害というのか、妥当な損害賠償の範囲ということは専門家でも難しいところですので、そのような場面に直面したら、ご遠慮なく福岡パシフィック法律事務所までご相談ください。
















