西日本新聞1月24日記事

西日本新聞1月24日記事


以下の文章は,西日本新聞(1月24日付)に掲載された米田弁護士の記事の元となったものです。
新聞は紙面の関係上,字数を制限されていたのですが,遺留分をどうやってクリアするか,という点について触れておりますのでご参考までに。

私には妻と2人の子供AとBがいます。
このうちのAだけに,私の財産を全て相続させたいのですが,可能でしょうか?

1 相続について

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人が亡くなると相続が発生します。
亡くなった方のことを被相続人と呼びます。
相続が発生した場合,誰が相続人であるか,法律で定められています。
この法律で定められた相続人のことを法定相続人といいます。
またそれぞれの相続人がいくらの割合で相続財産を取得するかについても法律で定められており,これを法定相続分といいます。今回の場合,法定相続人は,妻と2人の子供の合計3人です。法定相続分は,妻が全財産の4分の2(2分の1),2人の子供がそれぞれ4分の1ずつとなります。

では,Aだけにすべての財産を相続させるとの遺言があった場合はどのようになるでしょうか。
このように,法定相続分を無視した遺言であっても有効ですので,各法定相続人が,遺言通りの分割で構わないと納得すれば問題ありません。
しかし,遺言通りの分割では納得できない法定相続人がいる場合,たとえ,Aにすべての財産を相続させると遺言に書いてあったとしても,Aがすべての財産を相続することはできないことがあります。
法定相続人に,遺留分が認められることがあるからです。

2 遺留分とは

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遺留分とは,簡単に言うと,遺言によっても奪う事の出来ない相続財産の取り分の事です。
本来,自分の財産は自由に処分できるのが原則なのですが,相続財産には自宅などが含まれることも多く,相続財産に対し一定の取り分を認めないと被相続人と同居していた妻などが突然住居を奪われ,経済的にも生活にも困るというようなことも起こるかもしれません。
そこで,私たちの民法は,被相続人の生前の意思を遺言という形で残すことを認め,他方で,相続人の従前の生活の保護や相続財産に対する期待権を遺留分という形で認めることで調和を図っているのです。
このような理由から,遺留分,すなわち相続財産に対する取り分の量も法定相続人ごとに定められています。
直系尊属のみが相続人の場合は遺留分は法定相続分の3分の1ですが,その他の場合は法定相続分の2分の1で,兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

本件では,たとえ,Aにすべての財産を相続させるとの遺言があったとしても,妻にもBにも遺留分が認められますので(具体的にはそれぞれ4分の1,8分の1),遺言通りの遺産分割がなされるとは限らないのです。
したがって,基本的には,Aにすべての財産を相続させたくても,法律上,それを自由にすることはできない,とお考え下さい。

3 遺留分対策として

このような事情から,生命保険を利用して,できるだけ被相続人の意思に近い相続を実現するという方法もあります。
死亡時に支払われる保険金は,原則として,相続財産に含まれないため,遺留分を補うように生命保険をかけることで,事実上,相続財産の全てをAに単独相続させたのと同じ経済的効果が得られる場合があるのです。
しかし,保険金の受取人が誰かとか,生命保険の月々の掛け金を払ったのは誰なのか,といった事情によっては,保険金が相続財産に含まれたり,特別受益という形で相続財産に影響を与えることがありますので,注意が必要です。

相続対策は,各依頼者様の御事情ごとに異なりますので,より詳しくは,弁護士まで御相談下さい。
弊事務所では,法的観点だけでなく,保険,税務,登記関係も含め,総合的に対応させて頂いております。

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