プレジデントという雑誌の6月17日号で,興味深いタイトルがあったので,購入して読んでみました。
ご存じか?「相続と交通事故の弁護士第は,タダになる」
とのことです。
相続と交通事故,一見接点のない2つの問題・・・
実は弁護士代という
意外な共通点があった!
・・・・というのです。
わたしは,弁護士ですが,全く存じ上げておりませんでした。
内容を読むと,次のように書いてあります。
「相続と交通事故,一見接点のないこの2つの問題だが,どちらも弁護士の着手金が不要な事務所がある」(P.50)
とのことです。
確かに,着手金が不要な事務所を探すことはできるかもしれません。
ですが,その意味ですと,過払い請求やB型肝炎訴訟なども着手金が不要な事務所を探すことができるかもしれません。
事案によっては,離婚や養育費請求なども着手金不要な事務所を探すことも可能かもしれません。
ちょっと,キャッチコピーから受けるニュアンスと,実際の内容に食い違いがあるように感じるのは,わたしだけでしょうか。
このようなキャッチコピーを真に受けて,
「相続と交通事故は,弁護士費用はタダですよね?」
などと言いながら,法律事務所に相談に行ったりしないことを,強くお勧めします。
期待はずれになると思われますので。
弊事務所でも,かつては案件によっては,着手金不要で受任したこともありますが,最近では,たとえ50円でもきちんと着手金を頂くことにしています。
本来,訴訟は,ご本人が戦うものであり,弁護士はそのお手伝いをしているだけに過ぎません。
入学試験などの受験勉強でも同じですが,いくら先生が一生懸命になったところで,生徒本人が取り組む気がないと,良い結果がついてこないのです。
弁護士業務を続けていると,着手金を無料としてしまった場合に,ご本人が主体性をなくしてしまうような場面に遭遇することがあります。
スポーツジムのトレーニングでも,無料の体育館などで取り組むよりも,有料のスポーツジムで取り組んだ方が主体的に取り組めるというのと似ているかもしれません。
同様の理由で,法テラスをご利用のご依頼は受けない,とおっしゃる弁護士の先生もいらっしゃるようです。
法テラスは,その存在意義や運営状況それ自体を疑問視する弁護士の先生もいらっしゃいます。
弊事務所でも法テラス利用は,よほど法テラス利用すべき案件の場合に限って,法テラスで受任するようにしています。
弁護士費用ということで言えば,相手方に支払わせて,自分では支払わない,という考えの方もいます。
相手方に300万円請求して,300万円を受領し,弁護士費用として30万円を支払ったら,差し引き270万円となったというようなことはよくあることです。
このような場面を指して,相手に弁護士費用も支払ってもらう,とおっしゃる方がいらっしゃいます。
つまり,弁護士費用は相手に支払ってもらったうえで,自分は270万円を受け取るという考え方ですね。
お気持ちはよくわかりますし,結果的にはなにも間違いではないのですが,弁護士としては,相手方から弁護士費用を受け取るというのは違和感を覚えます。
やはり,依頼者様がお客様であり,あくまで相手方は相手方です。
相手方をお客様として扱うことは絶対になく,当然ながら,相手方から弁護士費用を支払っていただいて,弁護士代の領収書を相手に渡すなどはいたしません。
結果的にどう違うのか,と問われると,なかなか上手に説明できないことが多いのですが,依頼者は270万円を獲得したのではなく,この場合でも,300万円の支払を受けた,というべきなのです。
そして,300万円の支払の対価が30万円の弁護士費用なのであります。
270万円を獲得して,弁護士費用はタダになる!というのは,奇異に感じます。
お問い合わせはこちらから