弁護士ブログ

福岡パシフィック法律事務所 弁護士の米田宝広です。

福岡では,今年の夏は雨が多かったためか,雨漏りのご相談が非常に多くありました。

賃貸借契約の賃借人の場合は,賃貸人に雨漏りを修補するよう請求できますが,
所有者は建築会社に雨漏りの修補を請求できるのでしょうか。

この点,民法は次のように定めています。

仕事の目的物に瑕疵があるときは,注文者は,請負人に対し,相当の期間を定めて,
その瑕疵の修補を請求することができる(民法第634条第1項本文)

この規定を読むと,所有者は,建築を請け負った建築会社などに雨漏りを修補するよう請求できそうです。
しかし,これには,期間制限があります。

前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は,
仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない(民法第637条第1項)

これを読むと,所有者は建物の引き渡しを受けて1年以内でなければ
雨漏りなどの修補を請求できないようにも思えます。
しかし,建物については,次のような条文も定めてあります。

建物その他の土地の工作物の請負人は,
その工作物又は地盤の瑕疵について引渡の後五年間その担保の責任を負う。
ただし,この期間は,石造,土造,れんが造,コンクリート造,金属造その他これらに類する構造の工作物については,
十年とする(民法第638条第1項)。

つまり,コンクリートなどの建築物の場合ですと,10年の瑕疵担保責任を負うのです。
特に,住宅の新築工事については,
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下,「住宅品質法」と略します。)で次にように定められています。

住宅品質法第94条

第1項
住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、
請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、
住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、
民法第六百三十四条第一項 及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。

第2項  前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。

つまり,住宅新築の場合は,10年責任を負うことについて,特約で注文者に不利なものがあったとしても無効なのです。
たまに,建築会社で,
「うちは,建築技術に自信があるから,10年保証をつけますよ!」
なんて言う会社がありますが,10年間の責任というのは,そもそも法律の規定通りなので,
10年保証をつけるなんて,すごい!
なんて勘違いして感動して注文したりしてはいけません。
むしろ,法律を知らず,かえってコンプライアンスの意識が低い会社もあるので注意です。

なお,住宅品質法第95条では,新築住宅を売った売主の責任も定めておりますので,
建築会社だけでなく,売主にも責任追及できます。


お問い合わせはこちらから

弁護士費用見積りフォーム