1、ボート係留と有識者会議
福岡市が管理する漁港で、プレジャーボートが不法に係留されていた問題で有識者会議なども開かれています。
福岡市が漁業組合に対して不当利得返還請求をできるか否かという話なのですが、「不当利得」という言葉は、あまり一般には浸透しておらず、難しい概念かもしれません。
2、不当な「利得」とはなにか

たとえば、山で林業をしている人がいるとします。
Aさんとしましょう。
Aさんは、自分の山にある自分の木を切って、材木にして売って利益をあげているとします。
Aさんが木を切ろうとして、間違えて、隣のBさんの土地に生えていたBさんの木を切って、それを売って利益を得る。
これが「不当利得」です。
このときAさんが一生懸命経費をかけて伐採して、材木に整えて、努力して出荷しても、「不当利得」です。
Aさんが経費をかけて一生懸命仕事をしても、Bさんに損害が生じるに決まっていますよね?
3、返還請求権とはなにか
不当利得返還訴訟は、終戦後、特徴的な事件がいくつかあったようです。

終戦後、焼け野原のような土地が多い時代、たとえば、誰の土地かわからないような空き地で、Aさんがうどん屋さんをはじめたとします。
Aさんが、うどん屋さんで儲けが出た後で、戦争中に行方不明になっていたBさんが戻ってきて、
その土地は俺の土地だ!うどん屋の利益はこっちによこせ!
というような訴訟がわりとあったというようなことも聞いております。
実際にBさんが行方不明になっていたということを考慮すると、Aさんがうどん屋さんを勝手に経営していても損害はないように感じます。
しかし、そのようなことを法が許していると、勝手に人の土地で商売したり、勝手に人の木を伐採して売ったり、勝手に人の港をボートのオーナーに貸して賃料収入を得たりして良いことになります。
こんな状態でも良いのであれば、法律の意味がありません。
勝手に商売したり、勝手に利益を得ることは、「不当」だと法は考えるのです。
このときAさんが受けた「利得」がBさんの損害と言えるときに、本来の帰属者であるBさんに渡すことを「不当利得返還請求権」と呼んでいます。
土地を勝手に使われたのであれば、土地を有料で貸していたら得られた利益は、当然に損害だと言えますし、BさんがAさんのように、自分でうどん屋を開業したら利得があったと言えそうであれば、うどん屋の利益が損害だと考えられるのです。
なお、面白い裁判例があって、Aさんの独自の味付けで、大人気店として繁盛したAさんのオリジナルの利益部分までを、Bさんの損害というのはやりすぎだ、Bさん自身でうどん屋を開業していてもAさんほどの利益は得られなかっただろうとして、利得の一部については、損害との因果関係が否定されたという裁判例があったと記憶しています。
4、「不当」とはなにか

上記のAさんについて、木を切るときに経費をかけたとか、うどん屋さんに経費をかけていたとかはポイントではありません。
ポイントは「不当」か否かです。
すなわち、AさんがBさんから「木を切っていいよ」とか「ここでうどん屋さんを開いていいよ」とか許諾されていたら、まったく不当じゃありません。
当たり前のことです。Bさんから「いいよ」と言われているのですから。

福岡市の職員の9割が福岡市漁業協同組のボート係留を認識していたとの報道も見ますが、ようするに、福岡市が漁協に対して、「いいよ」と黙認していたら不当ではない。
だから不当利得返還請求ができない。
と、いうことだと思うのですがいかがでしょうか。
法律用語は、ときに独特の言い回しで、誤解が生じやすい面もあります。
わかったようなつもりでも、思い通りに請求ができないこと場面も多々あります。
お困りの際は、ぜひ、福岡パシフィック法律事務所まで、お気軽にお問い合わせ下さい。
難しい法律の話も、可能な限り、分かりやすくご理解いただけるようご説明いたします。
















