土曜日の夜、テレビを見ていると池上彰さんが刑事訴訟の解説をしていました。

テレビ的には面白おかしく、わかりやすく、というのが狙いであって、情報の正確性などは二の次というのかもしれません。

時期的にもゴーン氏の件で、保釈制度に注目が集まっている事情もあり慌てて準備したのかもしれません。

保釈という制度があるのは、どうしてか?

池上さんは、保釈制度がある理由は、

「無罪が推定されるから」

と述べました。

室井さんが

「あ~!推定無罪って聞いたことがある!」

と目からうろこが落ちたというような声を出していました。

たしかに、無罪が推定されるから、保釈しなければならないというのはまるっきり間違っているとは思いません。

しかし、そうだとすると、罪を否認している被告人ほど保釈されるべきかもしれません。

逆に、罪を自白していて「おれは絶対無罪じゃない」と100%認めている被告人は保釈しなくてもよいということになるのでしょうか。

弁護士の現場の感覚としては、否認しているほうが保釈されにくいように思います。

推定無罪というのは、刑事訴訟の大原則ではありますが、だとしたら、被告人についてはすべて在宅起訴すべきとも思えます。

起訴前の被疑者には保釈という制度がなく、起訴後の被告人に保釈が認められるということの説明にもなっていないように思います。

身柄拘束については、捜査の必要性とのバランスを説明せずに、そうだったのか、とはなり得ないと思います。

犯人じゃない、被告と言って欲しかった

次に、懲役と禁固の違いを説明していた時のことです。

どうして懲役と禁固という種類の刑があるのかということに対して、

井戸田さんが、

「犯人によって、ふさわしい刑を与えるため」

というような答えをいうと、

池上さんは

「悪くはないけど、ここは、犯人じゃなくて『被告』と言って欲しかった」

とドヤ顔でおっしゃいました。

井戸田さんは、さすが池上さん、ありがたい教えをいただきました、という顔で

「そっか~~~!!被告か~~~!!」

と大声で感嘆していました。

刑事裁判には被告はいません。いるのは、被告人です。

民事裁判には被告人はいません。いるのは被告です。

たしかにややこしいですが、全然別の制度の別の言葉です。

この場面では、被告と呼ぶよりも犯人と呼んだほうが数倍マシのように思いました。

民事裁判が提起されて被告になった人が

「被告なんて言われて、そんな呼び名、ほんと不愉快!」

と憮然とすることがありますが、刑事裁判と混同しているのでしょう。

この点は、民事裁判は原告、被告という呼び方を変えて、思い切ってXとYとかの呼び方にすれば良いのにとも思います。

できれば池上さんには、民事裁判の被告のみなさんのためにも、

被告人と被告は別のものなので、呼び間違えないように気を付けましょう、

と解説して、みんなにそうだったのか!!と言わせて欲しかったです。

検察審査会

さらに踏み込んで、検察審査会という、あまり皆さんに知られていない制度にまで踏み込んで説明してくれてました。

市民で会議

市民で会議

検察審査会のすばらしさを解説していただき、検察審査会に深くかかわっている福岡パシフィック法律事務所としても、うれしく思ったのですが、

最後に平泉さんが

「検察審査会で話し合って、結論が変わって、起訴されて有罪になるケースもあるんですか」

というような内容を尋ねると、池上さんは、なにを当たり前のことを聞くんだ??と目を丸くしながら

「そんなのしょっちゅうですよー!」

とおっしゃっていました。

しょっちゅうという言葉は、人それぞれの感覚ですから、

地球にしょっちゅう隕石が落ちてきているとか、

あの人はしょっちゅう宝くじで1等にあたってるよ、

なんて言葉も、言っている本人はうそを言っているつもりはないんでしょうし、とやかくいうつもりはありませんが、弁護士としては、

弁護士驚き

えっ!??!?  そうだったのか????

と違和感を覚えてしまいます。


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