
福岡市で警察を名乗る詐欺電話事件が多発
警察官を名乗る男などからSNSのビデオ通話で
「身柄を拘束しあなたの口座を凍結します」
などと言われ、福岡市の50歳の男性が現金計863万円をだまし取られていた、というニュースが6月18日、報道されました。
春日警察署によりますと6月16日、福岡市早良区の会社員の男性(50)の携帯電話に警視庁の警察官を名乗る男から電話があり
「特殊詐欺の事件で心当たりはないですか。あなたのキャッシュカードが事件に使われている。兵庫県に来れますか」
などと言われたとのことで、16日から17日にかけて3回にわたり、現金合計863万円を指定口座に振り込み、だまし取られたということです。

警察から電話が(こちらはイメージ図です)
福岡パシフィック法律事務所で、直接、電話がかかってきたとのお話を聞いただけでも、ここ2か月で4件もあり、現在、毎日のように福岡市の人が狙われているようです。
福岡パシフィック法律事務所の弁護士にも詐欺電話が!!
なんと、先月5月28日、福岡パシフィック法律事務所の所長弁護士である米田あてにも詐欺電話がかかってきております。
1 5月28日14時頃
福岡パシフィック法律事務所の弁護士米田が、いつも通り事務所で仕事をしていると、突然、個人用のスマートフォンに電話がかかってきました。
通常、仕事中は個人用のスマートフォンに出ないようにしているのですが、直前に、たまたま友人である公認会計士と個人用のスマートフォンを使って仕事の話をしていたために、かけてきた相手を確認せずに出てしまいました。
すると、相手は「警視庁捜査2課の徳永です」と名乗りました。
実際の音声はこちらです。
福岡パシフィック法律事務所では、刑事事件も取り扱っておりますので、毎日のように警察署から電話がかかってきます。
複数の弁護士が刑事事件を担当しているときは、1日に複数回かかってくることもあります。
そのほとんどが、身柄を勾留されている被疑者から、弁護士に対しての面会の申し入れです(警察からは「接見希望です」と伝えられます)。
弁護士米田としても、警察からの連絡は慣れていますので、過去に事件で担当した被疑者、被告人関係の話かな、と思ってしまいました。
きくと、樋口拓哉という男が逮捕されたという話でしたが、聞き覚えがありません。
一般には、福岡パシフィック法律事務所の固定電話にかかってくるので、弁護士の個人スマートフォンにかかってはこないのですが、実は、いままでにも警察署から個人用のスマートフォンに電話があったことが何回かあった経験があります。
弁護士が被疑者に接見に行くまえに、「今から接見に行きます」と警察署の留置管理課に電話をかけることがあるのですが、そのときに個人用の携帯電話(当時PHS)でかけてしまったことがあり、おそらく着信履歴を保存していたのだろうと思われます。
その携帯電話に警察署から接見希望の電話がかかるようになってしまい、迷惑に感じたことがありました(そのPHSは解約しました)。
このような経験から、思わず、「警視庁捜査2課徳永」と名乗る男と会話をしてしまうことになります。
2 楽天銀行のキャッシュカード
警視庁捜査2課徳永がいうには、米田の楽天銀行のキャッシュカードが愛知県で逮捕された樋口拓哉の家宅捜索で見つかった、というのです。
「そんなはずはない」
と思い、答えると
警視庁捜査2課徳永は
「米田さんの個人情報を抜かれて、勝手に銀行口座を作られた可能性があります」
と述べました。
そんなことがあるのか、と思いましたが、なんとここで警視庁捜査2課徳永は、米田の生年月日、住所をいきなり電話口でしゃべりました。
さすがに、これには驚きました。
かなり昔、ベネッセで個人情報が流出してしまい、ニュースになり、弁護士米田の家にも500円の商品券かなにかがベネッセから送られてきた記憶がありますが、こういうことから、氏名、生年月日、住所、電話番号程度の個人情報は、もはやダダ漏れになっている状態なのだろうと思います。
3 愛知まで来てほしい
警視庁捜査2課徳永は、勝手に楽天銀行のカードを作られているので、愛知県まで来てほしいといいます。
警視庁捜査2課徳永は、とにかく適当な捜査の必要性のようなことを述べて
「愛知まで来れますか」
と述べます。
実際にくることはむずかしいだろうから、電話などで手続しましょう、と持ちかけたり、さらにラインなどの個人情報を聞き出すなどして、金銭の振込までもっていくのが狙いなのだろうと思います。なんとか、対応させようとして、
「放っておくと被害届が出る可能性があるんですよ。分かりますか、どういう意味か?」
という、ような意味不明のことを言って脅してきます。
電話で対応できますか、と言われて対応できないと言うと、警視庁捜査2課徳永は、困ったような声で
「あぁあ・・・はいぃい・・・あぁぁああ」
と言い出して、こちらから警視庁や愛知県警に相談をして、警視庁捜査2課の徳永が間違いなく電話をしているかどうか確認するというと、話の途中で、いきなり、電話を切られてしまいました。
4 録音と利用について
(1)盗聴と秘密録音
ちなみに、今回、警視庁捜査2課徳永との会話を録音しました。盗聴にあたるのではないか、という点が気になるところかもしれません。
たしかに警視庁捜査2課徳永には秘密にして録音しましたが、自分が会話しているのを自分で録音しているのであって、あくまで「秘密録音」と呼ばれる類型であり、自分ではない第三者同士の会話を、こっそり盗み聴く「盗聴」とは異なるものであると考えられます。
刑事裁判でも盗聴したものは証拠になるのか、という議論がありますが、秘密録音に関しては問題なく証拠として取り扱われると考えて頂いて差支えなかろうと思います。
(2)録音の利用
なお、今回、実際の音声を一部公開していますが、プライバシーの侵害に当たらないか、という問題は生じうるところですが、今回の警視庁捜査2課徳永を名乗る男の今回の会話に、そもそも法的に保護されるべきプライバシー権だとかなにかの権利がが認められる余地はなかろうと思われ、これで、警視庁捜査2課徳永を名乗った男の法的に保護される権利を侵害したということはならないという結論になると考えます。
(3)一般の方の対応
トラブルから身を守るために、録音は有益な手段であります。
盗聴はしてはいけないと思いますが、皆様には、積極的に録音をするよう日頃から心がけて頂きたいと思います。
秘密録音に関しては、目の前の相手に秘密にするわけですから、道徳的にはマナーが悪いことのようにも思え、弁護士として、積極的に秘密録音しましょうと呼びかけるのはためらわれます。とはいえ、録音行為そのものが違法となることはないので身を守るためには、ここぞというときには現代社会においては必要な行為と思います。
次に、録音それ自体は違法ではなくても、その録音したものを、どう利用するかについては注意が必要です。
利用方法次第では違法にもなり得ますので、ぜひ、弁護士などの専門家にきちんとご相談の上、取り扱っていただきたいと思います。
5 詐欺の対応
本物の警察署からの電話は、末尾が「0110」になっていることが多いと思いますが手が込んだことに、福岡パシフィック法律事務所で把握している電話番号は、いずれも末尾が0110でした。末尾をみると警察からの電話のように思えるかもしれません。
とはいえ、これらの詐欺電話の場合、電話番号の冒頭に国際電話などを示す+がついていたりしますので、電話番号を見て、判断が可能と思われます。
このような番号からかかってきても出ない、というのが肝心ですが、出てしまった場合でも、上記のように、「警視庁に問い合わせてみます」と言って本物かどうか確認すべきです。
また、もしこのような電話からかかってきたのであれば、個人情報が漏れているということなので、できれば電話番号を変更するのが良いと思われます。