1 死産した男児を知人のごみ箱に捨てた!?同様の支援

福岡県内の弁当製造会社で働いていたベトナム人女性が
妊娠したものの周りに相談できずに出産し、死産した男児を知人のごみ箱に捨てたとされる事件で
新聞記事では「日本人と同様の支援を」との見出しをつけています。

この事件の背景は記事から想像するしかありませんが、
行政ないし法的支援が受けられなかったベトナム人女性に、
日本人と同様の行政ないし法的支援があれば、このような事件が生じなかったのではないか、
との視点を与えてくれます。

実際に福岡では外国人の方が増えているように感じます。
福岡パシフィック法律事務所では、特に天野広太郎弁護士が外国人の弁護活動を数多く手がけています。
また福地浩貴弁護士は、中国語会話のレッスンを受けて勉強中です。
中国系の企業様の契約書などの作成もなんども行っております。
外国企業の顧問先様も増えつつあります。

2 人権保障
日本では、日本国憲法ですべての国民に人権が保障されていますが、
日本に住む外国人にも人権が保障されているのでしょうか。

最高裁は、
「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」
と述べており、日本国民のみを対象としているものを除き、外国人にも日本人と同様の人権が及ぶと判断しています。

もっとも、権利の性質上、どれが日本国民のみを対象としており、
どれが外国人にも等しく及ぶものなのかは、検討が必要です。

3 社会権
憲法では最低限の文化的生活を営む権利が保障されていますが、これらの権利を実現するために生活保護制度などがあります。
かつては、外国人には認めないという禁止説という考え方がありました。
外国人は、もともと別の国家の人だから、その国家に保障してもらうべきであり、
社会権は国庫で負担するものだから日本国の構成員にのみ使用すべきだという考え方です。

しかし、このような禁止説という考え方は、あまり見られなくなり、
むしろ今では、
財政の懐具合などを検討しながら、外国人にもお金を使うことは許されるという許容説が一般的ではないでしょうか。

4 構成員たる地位と保障
記事では、許容説をさらに推し進めて、むしろ、日本人と同様の支援すべきである、という見解を述べています。
たしかに、国庫で負担するお金は、日本国の構成員にのみ使用すべきという発想だとしても、
むしろ、税金を納めている在留外国人の方は構成員として、日本人と同様の支援をすべきということになるでしょう。

本件の問題は、在留の程度が、永住のようなものなのか、実習生として一時的に来日しているだけなのかというところがポイントです。
なんら制限を設けなければ、日本の産婦人科で出産したいという外国人が出産のためだけに来日することも、国庫の負担で保障することになりかねません。

この事件は、日本の構成員たる地位をどのようなタイミングになると認められるのか、
そして、構成員たる地位が認められた場合にはどのように保障がされるのか、
という問題を考えさせられる事件であります。