弁護士ブログ

本日の西日本新聞の1面で、下関市の耐震欠陥マンションについて記事が出ていました。

福岡パシフィック法律事務所では、たくさんの建築訴訟を行ってきましたので、このような欠陥マンションのご相談も数多く受けております。

弁護士の視点から、耐震欠陥マンションの法的な問題をブログに書いてみたいと思います。

1 耐震についての法律

耐震強度については、法律改正が相次いで行われております。

いわゆる阪神淡路大震災では、6400人以上の死者がでており、この多くが構造物の下敷きになるなどの原因で亡くなっており、耐震強度について考えさせられる契機となりました。

福岡パシフィック法律事務所代表の米田弁護士は、当時、大学生で、神戸にボランティア活動に行きましたが、古い構造物が見るも無残な状況に崩壊しているのに対し、新しいマンションなどは無傷のものも多く、建物の強度によって地震の被害が全く異なることを目の当たりにしました。

その後、建築基準法は改正されます。

耐震強度について、より安全性の高い基準に改正されました。

しかし、地震は、次々に起こり、東北の震災、熊本の震災などが生じるたびに、法律は改正されてきたという経緯があります。

2 建築と販売

このように建築基準法は改正されており、建築業者に対してはより高度な基準を満たすよう法律は求めておりますが、販売業者については、特に耐震強度については、大きな改正はありません。

販売業者が不動産を販売する際、あるいは仲介業者が仲介する際に、いわゆるレッドゾーンやイエローゾーンの重要事項説明や、津波などの水害についての重要事項説明義務は強化されてきておりますが、耐震基準を満たすか否かは、建築業者が負うべき責任であり、販売業者のほうで、阪神淡路大震災以前よりも調査義務が重くなったというような改正はされていないように思います。

西日本新聞の記事でも販売業者は、「よほど不法なものを販売したときのみ不法行為責任を負う」と主張しているようですが、これはその通りです。

そもそも、過去には、耐震基準にみたないものを販売したときに賠償責任を負うのか、という議論すらあり、裁判で戦われた結果、ようやく「よほど不法なものを販売したときは不法行為責任を負う」というような限定的な責任追及ができるように進化してきたのです。

3 分譲住宅特有の問題

このように、法的には責任追及が大変な事案なので、弁護士の目線からみると、避けられない分譲住宅特有の問題が存在します。

法的な手続きをとろうとすると費用や手間がかかるのですが、集合住宅ですから、そこに住んでいる住民の誰かひとりが弁護士に相談し、裁判に勝ち、責任追及が認められれば、弁護士に相談せずに裁判もせずに何もしなかった人も、たとえば耐震強度を満たすように建物が補強されるとか、転居費用を受け取れるとか、いわゆるフリーライドの問題が生ずるのです。

福岡パシフィック法律事務所でも、なんども分譲マンションの管理組合の理事さんや、組合員さんなどから相談を受けましたが、相談を受けたなかで、本当に法的な手続きに進もうという案件がきわめて少ないです。

管理組合の仕事をしているような積極的な住民の方は、「なんとかしなくては」と真剣に思っていらっしゃるのですが、分譲住宅の住民全員で同じ熱量で裁判に取り組めるということが、ほぼなく、住民のみなさんは、普段はお仕事や学校などありますので、誰かがやってくれたらそれでよい、という方がどうしても半数以上いらっしゃるのです。
そうすると、管理組合で裁判費用や建築瑕疵の調査費用が捻出できなかったりして、解決が先延ばしになってしまいます。

結果的に、不法行為責任の存在に気がついても、その後、気づいてから数年が経つなどして、あっという間に時効になってしまいます。

そもそも、建築して引き渡してからの時効の壁(この点は、記事の中でも「時間の壁」という表現で指摘してありました)もある上に、このような分譲住宅特有のフリーライドの問題があって、解決が難しい問題となってしまっています。

4 まとめ


本件のような問題は、実は、ニュースや裁判になっていないだけで、同様の問題が多数全国で生じているのだろうと思います。
実際に、福岡パシフィック法律事務所でも、ニュースや裁判になっていない、同様の分譲住宅の建築瑕疵の問題について多数相談を受けています。
きちんと法的手続きにのせることができた案件は少なく、多くの被害が放置されたままとなっていると言えるでしょう。

建築瑕疵についてお悩みの方は、福岡パシフィック法律事務所にご相談下さい。

092-726-8429