法律に抜け道や抜け穴があって,それをうまく利用して商売をすると儲かるというイメージを持っている人がいます。

そもそも,法律は立法機関である国会の議決で制定されますが,国会に提出される法律案そのものは,基本的に官僚スタッフが作成しており,内閣法制局で文言や他の法律との整合性が厳しくチェックされています。

法律は法律案作成のプロである官僚や内閣法制局で厳重にチェックされた後国会に提出されることになっているので原則として本来あるべき条項が漏れていたり立法者が規制しようとした行為が規制対象となっていなかったりといった事態はまずありません。

結論から言えば,法律に抜け道や抜け穴というものは存在しないと思っていただいて構いません。

にもかかわらず,弁護士に対して「なんとかならないか」という相談をされる方がいます。

このような相談は,分かり易く言えば,赤信号を進んではいけない,ということは十分御存知のはずなのに,「合法的に,赤信号でも進んでよいというやり方を教えて欲しい」とか「自分だけは,なんとか赤信号で進みたい」というようなことを依頼されているようなものです。

弁護士としては,「救急車やパトカーなら赤信号でも進める場合があります」としか答えようがありません。

しかし,そう回答すると,

「そんなことは知っている。なんだ,弁護士って使えないなあ」

とがっかりされることがあります。

弁護士としては,がっかりされて,申し訳ない気持ちになるのですが,だからといって

「なんとかあなただけ,赤信号で渡らせてあげます」

などと約束できるはずありません。

弁護士の立場から,そんな約束ができないのはすごく当たり前のことなのですが,「○○に強い弁護士」などが存在して,あなただけの得になるような特別な抜け道ややり方を導いてくれると信じている人は大勢いるのです。

弁護士の仕事をしていると,法を犯し,刑務所に入ってしまった人や,莫大な民事の賠償責任を背負った人に日常的に接します。

たしかに,たった1回信号無視をして捕まることはあまりないでしょうし,極端に言えば,飲酒運転や痴漢行為や横領行為でさえ,たった1回で露見してしまったという例は実は多くなく,捕まらなかったから複数回やってしまったという人の方が多いです。

弁護士から見ると,莫大な賠償責任を負う可能性がある危うい経営をしている事業者に会うことがありますが,その人たちに,そのやり方は危ないですよ,というと決まって返ってくる答えが

「今までは,これで一回もトラブルにはならなかったんだ」

というものです。中には,

「あなたは弁護士だから,業界のことが分かっていない。業界では,こんなの当たり前に行われているんだ」

と違法行為を正当化してしまう人すらいます。

さんざん危険な橋を渡って,いざ困った時に弁護士に頼めばいいと考える人がいますが,そのタイプの人が弁護士のところに相談に来た時には,すでに手遅れということも珍しくありません。

当たり前なのですが,人として,社会で生きる上での最低限の遵法意識は,いつも必要なのです。